子どもたちの元気な声が響くアイランドシティ。この街にある3つの小学校の一つ、照葉はばたき小学校のすぐそばには、福岡県をホームタウンとするプロバスケットボールチーム「ライジングゼファーフクオカ」の練習場や事務所があります。地域貢献活動にも力を入れているライジングゼファーフクオカは昨年、照葉はばたき小学校の6年生が自ら運動会を企画・運営する取り組みをサポートしました。2年目を迎えた今年も、6年生たちは運動会のプロデュースに挑戦します。総合学習の授業の様子と、6年生の学年主任を務める後藤祐生先生、ライジングゼファーフクオカホームタウン事業部の出口義徳さんのお話から、その挑戦をお伝えします。
6年生が“弟子入り”。プロバスケットボールの試合を支える裏方の仕事を知る
9月18日、照葉はばたき小学校(以下、はばたき小)の多目的教室に、6年生2クラス、70人弱の子どもたちが自分の椅子を持って集まりました。前に並んだのは、ライジングゼファーフクオカ(以下、ライジング)のスタッフです。授業の目標は「運動会をプロデュースするための技を、お師匠・ライジングさんから学び取ろう!」。子どもたちは“弟子”として、運動会に取り入れられそうな技をプリントにメモしながら、熱心に話に耳を傾けていました。
最初に登場したのは、試合のプロデュースを担当する、興行部興行運営グループ・グループ長の坂田晃一さん。「試合の準備に、引っ越し屋さんのようなトラックを何台使うでしょう?」「試合会場で働くスタッフは何人?」と、ホームゲームの設営について4択クイズで問いかけ、子どもたちは次々と正解と思うものに手を挙げていました。
続いて、はばたき小のすぐ近くにあるホームアリーナ「照葉積水ハウスアリーナ(福岡市総合体育館)」の設営風景を動画で視聴。リングや客席、ビジョンが次々と設置され、会場がたった1日で作り上げられていく様子に、子どもたちは釘付けになっていました。
坂田さんが「何のためにこんなことをしているのでしょう?」と問いかけると、「お金をもらうため」「観客のため」「家族のため」と次々に声が上がります。坂田さんは「どれも正解。選手やお客さん、関わってくれるいろいろな人たちのために、この大変な作業をやっているんです」と話し、「なんとかなるかな、ではダメ。チェックが非常に大事です」と準備の大切さも伝えていました。
一体感を生む“技”と、試合を楽しみにしてもらう「発信」
ここからは、いよいよ盛り上げの“技”です。坂田さんによると、会場に一体感を生むカギは、手拍子や声がそろうこと。そのために大切なのがリズムです。「タンタンタタタン、レッツゴー、ライジング!」というおなじみのコールが流れ、「知っている人?」と聞かれると、子どもたちから「はい!」と元気な返事が返ってきました。
次に「ヨシさん」こと出口さんからは、「発信」についての話がありました。「ライジングの試合は、試合開始の瞬間がスタートではありません」とヨシさん。試合の約2カ月前から告知を始め、LINEでの選手インタビューや来場アーティストの動画メッセージなどを通して、試合を楽しみにしてもらう工夫を重ねているそうです。
「一体感を盛り上げるコツは?」弟子たちの鋭い質問
後藤先生が「運動会に取り入れられそうな技、いくつ見つけた?」と問いかけると、「10個以上」に手を挙げる子も。近くの友達と相談する時間をはさんで質問タイムが始まると、次々と手が挙がります。
「一体感を盛り上げるコツは?」には「みんなが聞いたことのある曲や掛け声を使うこと」、「選手と観客の距離を縮めるには?」には「リーグのルールぎりぎりまで客席を前に出しています」との返答。ほかにもMCのコツやマナーの悪いお客さんへの対応など、運動会の運営を「自分事」として考えているからこその具体的な質問が続きました。
先生からは「相手チームのファンへの盛り上げ方は?」という質問も。「遠方から来てくれる相手チームのコールリーダーには、こちらから声をかけて、応援したいタイミングでは音楽を下げることもあります。相手チームの地元出身アーティストの曲を流して、ちょっとしたおもてなしをすることも」との答えに、ホームもアウェイも関係なく、会場全体で楽しんでもらおうとする姿勢がうかがえました。
最後は“弟子代表”の児童が「運動会では、親や関係者に喜んでもらうために一体感を大切にしていきたいです」とお礼のあいさつ。後藤先生が「今日いただいた技をもとに、どんな役割が必要かを考えて、実際に動いていきましょう」と呼びかけ、11月12日の本番に向けた運動会づくりが本格的にスタートしました。
テーマは「来る人全員が団結し、楽しめて思い出に残る運動会」
授業の後、後藤先生と出口さんに、取り組みを始めた経緯や、運動会のプロデュースを通して子どもたちに積んでほしい経験について伺いました。
プロフィール
| 後藤祐生(ごとう・ゆうき)先生 照葉はばたき小学校 6年生学年主任・担任。教員歴18年目。子どもの頃は豚骨ラーメン屋になるのが夢だったが、小学5・6年生の担任だった恩師に憧れ、小学校教諭の道へ。今、まさに憧れの仕事のど真ん中で働いている。 |
| 出口義徳(いでぐち・よしのり)さん ライジングゼファーフクオカホームタウン事業部。小学3年生から続けるバスケットボールを仕事にしたいと、Bリーグが始まった2016年に入社。広報を長く務めた後、ホームタウン事業部へ異動し、現在2シーズン目。 |
ー今回の取り組みが始まったきっかけを教えてください。

昨シーズンからキャリア教育事業に取り組むことになり、アイランドシティ内の3校に提案したところ、手を挙げていただいたのがはばたき小と照葉北小学校でした。はばたき小とは、子どもたちが自分たちで運動会などを企画・運営するにあたって何を準備しなければいけないのか、その実現をライジングとしてどうサポートするかに取り組んでいます。
ー昨年はどんなことをしたのでしょうか。

昨年の6年生は「ワクワクさせるイベントをつくる」をテーマに、MCが開会前に観客を盛り上げたり、照明で彩りを加えたり、チアリーダーがダンスを披露したり、応援タオルをプロデュースして配ったりしていました。
ー今年はライジングさんにどのようなお願いをされたのですか。

子どもたちと話し合って決めたテーマが、「来る人全員が団結し、楽しめて思い出に残る運動会」です。「来る人全員」には保護者や来賓の方も含まれます。当事者以外の人たちにも団結してもらうには、本番までの「発信」が大事だという話になり、そこを多めに教えていただきたいとお願いしました。
本物を見て、子どもたちが動き出した
ー総合学習の後、どのように進んでいますか。

10月10日のライジングさんのホームゲーム開幕戦を、設営の段階から見学させていただきました。たくさんの人が動く様子や、出口さんがゴール下で動いている姿も見て学校に持ち帰り、運動会に必要な役割を考えました。今、照明、応援団、会場、宣伝、誘導、見守り、MC、チア、インタビュー、実況など、10個ほどの役割が出ています。
ー子どもたちの反応で、印象に残っていることはありますか。

試合見学で特に影響を受けていたのが会場係の子どもたちです。試合の日、入場時にライジングカラーの青いチラシが配られたんです。試合中の演出でそれを観客席から掲げる場面があり、会場がライジングブルー一色になって。応援タオルと同じような使い方ができるんだと、私自身も感動しました。それにビビッときた会場係の子が今、表が赤・裏が白のものを保護者や児童に配り、応援に巻き込む企画を考えています。

ほかにも、最初は希望者がいなかったチアに「やってみたい」と変更を申し出た子がいました。リハーサルを重ね、試合の合間の60秒でコートに出て踊り、戻った後も笑顔で凛と立つチアの皆さんの姿を見たからです。生で本物を見ることは、本当に価値のある体験だと感じています。
ーさまざまな役割があるので、運動に自信がない子にとっても、活躍できる場がある運動会になりそうですね。

はい。5・6年生になると、学校から割り振られる係の仕事があります。今回の6年生はそれに加えて、自分たちで考えた運営の仕事にも取り組みながら、プレイヤーとしても出場します。「プレイヤーだけの運動会」ではないので、さまざまなやりがいと活躍の場があるはずです。
ー準備を進めるうえで、先生方が気をつけていることはありますか。

テーマからブレないことですね。子どもたちからはいろいろな発想が出てきますが、なんでもいいわけではありません。そんなときは「これは何のためにやるの?」「テーマは何だった?」と問いかけます。大事なのは、テーマを達成するために、それぞれが責任を持ってどう動くか。プロであるライジングの皆さんでさえ、何時間も前から何度もリハーサルをして、横の連携を取っている。その姿勢から、責任感と実力を身につけてほしいと思っています。
表ではなく「裏」を知ることに価値がある
ー公立の小学校でここまで本格的な取り組みは珍しいのではないでしょうか

かなり独自だと思います。アイランドシティ校区に学校があること、総合体育館で運動会ができること、そして地域に根付いたライジングさんがいてくれること。その環境がそろっているからこそだと思っています。
ープロスポーツチームと関わるからこその価値は、どこにあると思いますか。

照葉ではライジングがあるためバスケが人気で、子どもたちは自然と学びの土俵に乗ってきます。ただ、今回話を聞いているのは選手ではなく、選手を支える裏方の方々です。お客さんとして行くと表で活躍する選手しか見ませんが、その裏には何十、何百という人がいて、選手を盛り上げるために動いている。それを教えてもらえることに、すごく価値があると感じています。
ーライジングとして大事にしていることは何ですか。

我々はまだまだ発展途上のチームです。「照葉といえばライジング」と思ってもらうには、長期目線で考える必要があります。まずは今の小学生や地域の方々に触れてもらうこと。その子たちが大人になったとき、「あの時の体験があったから今がある」と振り返ってもらえるようなきっかけを提供できればと思っています。この取り組みも単年で終わらせず、今後も続けていきたいですね。
ー出口さんは、ホームタウン事業部での仕事にどのようなやりがいを感じていますか。

以前は広報を長く担当していましたが、今の部署では、まだライジングを知らない人に直接アクションできています。その人たちをいかに引き込むかといった課題も感じながら楽しんで取り組んでいます。5年後、10年後の来場や盛り上がりにつながればうれしいですね。
本番に向けて。目指すは「楽しかった!」の声
ー運動会の後、どういった声が聞こえてきたらうれしいですか。

テーマにある「楽しかった」「団結していた」「思い出に残った」という声が参加した方から出てきたら、テーマを達成できた一つの証しになると思います。子どもたちには、プレイヤーとして運動会を楽しむだけでなく、企画を運営した達成感も味わってほしい。出口さんがおっしゃったように、人生の次のステップにつながる経験になるといいですね。次に予定しているクリスマスコンサートの企画にも、このスキルをつなげてほしいです。
ー最後に、本番への意気込みをお願いします。
文章:DAYS応援サポーター・ヒロ
写真:西澤真喜子

