アイランドシティ中央公園の遊具エリアにはよく行くけれど、あの緑に覆われた建物の中には何があるんだろう? と気になっている方も多いのではないでしょうか。中央公園の敷地内にある「体験学習施設ぐりんぐりん」は、子ども連れのファミリーはもちろん、大人がひとりで静かに過ごすのにもちょうどいい場所です。天候を問わず屋内で過ごせるので、雨の日や真夏の外出に迷う日にも重宝します。今回は、近隣にお住まいのすべての方に知ってほしい、この施設の魅力をお届けします。
花博から生まれた、20年の歴史
ぐりんぐりんのルーツは、福岡を会場に開催された第22回全国都市緑化ふくおかフェア(アイランド花どんたく)2005にあります。会期中の73日間、展示やワークショップの場として使われた後、温室として整備・改修され現在の形になりました。現在は植物や生態系の保全活動にも取り組みながら、日々の運営が続けられています。
ぐりんぐりんの設計を手がけたのは、建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞受賞者・伊東豊雄氏です。一見、3つのドームを並べたように見えるぐりんぐりんですが、実際にはそれぞれのドームが2回ねじれ、スパイラル状につなぎ合わさった構造になっています。屋根の上を歩いていると、いつの間にか建物の内部へ、そしてまた屋根の上へと誘われる、丘や洞窟を散策するような感覚は、この連続するねじれから生まれています。
まっすぐな壁も柱も持たない変形ドームは、世界でも初めての試みでした。型枠に使われた木製パネルは2万5千枚以上、施工図は1000枚以上に及び、職人たちが一枚一枚を手作業で組み上げた、気の遠くなるような仕事の積み重ねでできています。
3つのエリアでの楽しみ方は人それぞれ
施設内は北・中央・南の3ブロックで構成されています。
北ブロックには入館料不要の休憩エリア「グリーンギャラリー」があります。テーブルと椅子があり、お弁当の持ち込みも可能です。
中央・南ブロックは有料エリア。料金は大人100円、小中学生50円、小学生未満無料と、お財布に優しい設定です。亜熱帯植物が年間を通して観察できる温室、熱帯魚の観察スペース、昆虫標本や植物の展示があります。さらに緑化された屋上へのスロープがこのエリアから続いており、「屋根の上に登れる」感覚は子どもから大人まで新鮮です。
建物全体がスロープ状の曲線で構成されているため段差が少なく、ベビーカーのまま回遊できるのも嬉しいですね。
なお、授乳室・おむつ替えスペースは中央ブロック内に設置されています。「赤ちゃん駅の利用です」と入口で伝えれば、入館料なしで利用できます。

「ここ、風が抜けるんですよ。施設の中でも特に涼しいスポットだと思います」と副所長の小山さんが教えてくれた、中庭に面した休憩スペース。実際に腰を下ろしてみると、植物の気配に包まれながら静かな時間が過ぎていきます。
雨の日は観察日和
今回案内してくださった副所長の小山さんが、取材中にこんなことを話してくれました。「植物の写真を撮る時に光が強すぎると色が飛んじゃうんですよね。曇りや雨の日のほうが綺麗に撮れるって言われたりするんです。植物を裏側からみてみると、葉脈の表情が見えてきれいですよね」。
確かに、観察してみると、雨空の下、温室内に差し込む光はやわらかく拡散して、葉脈のひとすじひとすじ、花びらの質感が浮き上がるように見えます。晴れた日とはまた違う表情に、しばし時間を忘れて見入ってしまいました。
植物の生態を間近で観察
温室内では、スーパーでしか目にしたことのないようなバナナやマンゴーが実際に育っている様子も観察できます。「バナナがなってる!」と、珍しそうに足を止める子どもの姿もよく見られるのだそう。他にも、レンブ(リンゴとナシを合わせたような甘酸っぱい果実)など、アジアの市場で見かけるような珍しい植物も並んでいます。植物の生態を間近で観察できる時間は、ゆるやかながらも貴重な体験になるのではないでしょうか。
毎月変わる体験と、年間30以上のイベント
館内では「ぐりんぐりんキッズ」という月替わりのプログラムを実施しているそう。植物名のクイズ、押し花での鯉のぼり作成、松ぼっくりを使ったクリスマスツリー工作など、未就学児から小学生を中心とした家族向けのイベントです。
また、ハーブ教室や多肉植物のリース作りなど有料・申込制のワークショップも定期的に開催されています。近隣の方はもとより、西区・南区など遠方からの参加者も多く、申し込み開始日に予約が埋まってしまうこともあるそうです。中には「かけっこ教室(年2回)」のように、予約開始から数分で埋まってしまうような人気企画も。大小合わせると年間30以上のイベントが、季節の花材や旬に合わせて組まれています。気になる方は、SNSや市政だよりなどをこまめにチェックしてみてください!
「丘」として設計された建物が、時間をかけて風景になる
建築家伊東豊雄氏がこの建物に込めたコンセプトは「建築物ではなく丘」だといいます。緑化された屋根に植物が根づき、鳥が種を運び、やがて公園の自然風景と一体化していく。そのビジョンは20年を経た現在、静かに実現されつつあります。
「あのあたりから見ると、建物というより丘が見えるんですよ」。小山さんが教えてくださったのはフォーリーという休憩所(東屋)としてつくられたモニュメントです。フォーリーからぐりんぐりんに臨むと、確かに木々の間に緑の丘が見えます。アイランドシティの風景に溶け込むように佇む不思議で自由な建築を眺めるのも、ここでしか味わえない体験の一つだなと感じました。
今回詳しく施設を案内いただき、「ここで仕事したらはかどりそうだなあ」「本を片手に一日過ごしたいな」と、色々な妄想が膨らむ時間となりました。入館料の手頃さを考えると、この美しい建物と緑に包まれる贅沢な時間を過ごせるこの場所を利用しない手はありません。
休憩時間にふらりと立ち寄る場所として。雨の日に植物を眺めながら静かに過ごす場所として。子どもが生き物に興味を持つきっかけとして。使い方は、訪れる人の数だけあります。
■施設概要
体験学習施設 ぐりんぐりん
住所:福岡市東区香椎照葉4丁目1番(アイランドシティ中央公園内)
TEL:092-661-5980
公式サイト:https://ic-centralpark.jp/grin-grin/
Instagram:@ic_central_park
開館時間:9:00〜17:00(最終入館受付 16:30)
休館日:毎週火曜日(祝日の場合は翌平日)
休園日:12月29日〜1月3日
入館料
大人(15歳以上):100円
小人(小学生以上):50円
未就学児:無料
※北ブロック(グリーンギャラリー)は入館料不要
アクセス
バス:天神・博多より25〜30分、「アイランドシティ中央公園前」バス停下車
車:福岡高速6号線「アイランドシティランプ」下車後、「アイランドシティ中央」信号を右折、「総合体育館」信号を右折
電車:西鉄貝塚線「香椎花園前駅」より徒歩25分

